地域建設業を取り巻く環境は、公共建設投資の下げ止まりや設計労務単価の引上げ等により全体として改善傾向にあったが、世界的な物価高騰、円安等により、資機材の価格高騰や品薄などの影響を大きく受けた。
また、気候変動の影響により近年頻発化・激甚化している豪雨や台風等の災害は、全国各地で発生し、本年1月能登半島地震のような巨大地震への備えの必要性など、防災・減災、国土強靭化の加速化対策の重要性は益々増大している。
このような中、災害から国民の生命・財産、社会経済システム等を守る地域建設業は、社会基盤整備の担い手としてその着実な執行に努め、雇用や経済活動を支えるとともに、一旦災害が発生した際は、その最前線で対応に当たる地域の守り手として、極めて重要な社会的使命を長年にわたり果たしてきた。
これからも、私たち地域建設業がその社会的使命を持続的に果たしていくためには、公共事業等による安定的・持続的な事業量の確保、処遇改善、働き方改革等による担い手の確保、経営基盤の確立など、様々な課題を克服していかなければならない。特に、本年4月には時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に全面適用されることから、これに的確に対応していかなければならない。
このような現状を踏まえて、本会の2024年度事業活動は、公共工事の円滑な施工への取組の強化、働き方改革の推進、事業を継続していくための経営基盤の強化など、魅力ある建設産業の再構築と地場建設業の発展に向け、行政及び関係団体と連携を図り以下の計画に基づき推進することとする。
地域建設企業が担い手を確保し、生産性の向上を図るとともに地域の安全・安心の守り手として社会的使命を果たしていくためには、安定した経営環境を確保することが重要なことから、全国建設業協会等関係団体と連携し、あらゆる機会をとらえ、公共事業予算の安定的な確保と社会資本整備の計画的推進について、国・県等関係機関に提言・要望活動を行う。
気候変動の影響により激甚化・頻発化する自然災害から国民を守るために進められている国土強靭化対策について、改正国土強靭化基本法により新たに義務付けられた実施中期計画を早期に策定し、併せて同計画に現行の5か年加速化対策以上の事業量を盛り込むことにより、中長期的かつ明確な見通しの下、加速化対策後も、継続的・安定的に防災・減災、国土強靭化の取り組みが進むよう提言・要望を行う。
また、減災・防災、国土強靭化対策の推進はもちろん、今後の公共事業予算の安定的な確保のためにも、公共事業を円滑に執行し、建設業界の施工余力が十分であることを示すことが重要であることから、全国建設業協会等関係団体と連携し、受発注者間の意思疎通を図り、不要な不調・不落の発生を防止する等、公共事業の円滑な施工の推進に取り組む。
2024年度実施する事業計画
~継続的事業
①九州地方整備局との意見交換会の開催
②福岡県(建設工事関係部)との意見交換会の開催
③全国建設業協会委員会への参画
④九州建設業協会地域・定例懇談会への参画
担い手3法の適切な運用のため、全国建設業協会と協調して発注者等における運用状況を調査し、会員企業へ情報提供を行う。
特に、改正品確法について、国はもとより地方公共団体、特に市町村における新たな運用指針(適正な利潤を確保できる予定価格の設定、適切な設計変更、施工時期の平準化等)の浸透・運用状況等について調査分析を行うとともに、改正建設業法に基づく「工期に関する基準」について、公共工事のみならず民間工事における運用実態の把握に努め、これらを踏まえて関係機関に対し提言・要望を行う。
また、地方公共団体や市町村における最低制限価格制度・低入札価格調査制度の運用についても適切な運用がなされるよう働きかけを行うとともに、公契連モデル上限枠の引き上げや計算式・率の見直しについても提言・要望を行う。
建設資材の実勢価格の予定価格への反映のほか、スライド条項や設計変更の運用状況等について、全国建設業協会等関係団体と協調し、情報収集に努め、課題解決に向け提言・要望を行う。
2024年度実施する事業計画
~継続的事業
①九州建設業協会建築委員会への参画
②九州建設業協会土木委員会への参画
③改正品確法の運用指針に定められた事項について、
発注者の運用状況、受注工事における収益性等について、
全国建設業協会と協調し情報収集及び分析
① 生産性向上に関する諸問題への取組
国の施策によりDX(デジタルトランスフォーメーション)やi-Constructionの取組が加速する中、ICT施工、BIM/CIM、遠隔臨場、工事情報共有システム(ASP)などインフラ分野のDXや建設ディレクターの活用、コンクリート構造物のプレキャスト化などの生産性向上策に関する情報について、収集・研究を深め、会員企業への情報提供を行う。
特にICT活用工事については、会員企業が取り組みやすい環境が整備されるように、小規模工事への導入上の課題、積算上の課題、人材育成・設備投資の負担等の課題の解決に向け、全国建設業協会等関係団体と協調し提言・要望を行う。また、BIM・CIMについても、情報収集に努め、適宜会員へ情報提供ができるよう取り組む。
② 建設技術者の技術力向上
会員企業技術者の自己研鑽・技術力向上のための諸方策について検討するとともに、体系だったCPD、CPDS認定取得機会の構築と講習会(オンラインを含む)等の開催を行う。
2024年度実施する事業計画
~継続的事業
①建築委員会の開催と建築関係講習会(オンライン)の開催
②土木・道路委員の開催と土木関係講習会(オンライン)の開催
③各支部から独自の意見を吸上げて開催する講習会の開催
④ICT研究会の開催
環境関連法令、建設副産物適正処理の施策等の動向について、情報収集に努め、適宜会員企業へ情報を提供するとともに、必要に応じて関係機関に対して、提言・要望を行う。また、2023年5月に成立したGX(グリーントラストフォーメーション)推進法に基づいたGX推進戦略のうち建設施工分野における脱酸素化の技術や施策についての情報提供を行う。
将来の担い手となる若年労働者の入職促進・定着、また高齢者・女性・外国人労働者など多様な人材の活躍機会拡大を図るため、政府が進める働き方改革等を踏まえ、労働環境や処遇の改善に取組む。
① 建設技能者・技術者等の処遇改善に向けた取組の推進
諸物価の高騰及びインフレ率以上の賃上げを目指す政府方針も踏まえ、建設技能者・技術者等の賃金引上げを通じた処遇改善に向け、全国建設業協会等関係団体と連携し、来年以降も設計労務単価の更なる引き上げ、技術者等の賃上げのため積算基準における一般管理費及び現場管理費の引上げ等について、提言・要望を行う。
② 働き方改革の着実な進展に向けた取り組み
本年の時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることから、全国建設業協会が進める「週休2日+360時間運動」、「社会保険加入の徹底」、「建設技能者等の賃上げへの取組」等の活動に協調し、労働環境の改善を進めるとともに、休日確保や若手従業員獲得などの成功例や解決策等事例を収集し、会員企業に情報を提供する。また、休日が増えても技能者の減収にならないよう労務単価の増減等必要な措置についても提言・要望を行う。
建設業の担い手の確保、育成のため発注や施工時期の平準化、週休二日制の確保を強く要望していくほか、生産性の向上を図るため、建設業におけるICT技術の活用やi-Construction、テレワーク等の施策に関する情報を収集し、適宜会員企業に情報提供する。
③ 建設キャリアアップシステムへの対応
技能者の処遇の改善や技能の研鑽を図ることを目指す建設キャリアアップシステムについて、全国建設業協会と協調し普及促進に取り組むとともに、技能者のその技能と経験に応じた労務単価の引上げ等といったメリットの実現や利用する事業者・技能者への支援措置等について提言・要望を行う。
④ 外国人就労への対応
政府が進めている技能実習に代わる新制度「育成就労」について、会員へ情報提供するとともに、全国建設業協会と連携し、同制度の具体的な運用等について、関係機関に対し提言・要望を行う。
また、高度人材をはじめとする外国人の採用活動が円滑に進められるよう、必要な情報を提供する。
⑤ 女性の定着促進に向けた環境整備
建設業で働くすべての女性が、働き甲斐と働きやすさの両立により、就業継続の実現に向けた情報発信を行うとともに、働き続けられるための環境整備に取り組む。
⑥ 高齢者・障がい者の更なる活躍に向けた環境整備
高齢者・障がい者の更なる活躍に向け、短時間勤務等の雇用形態の多様化をはじめとする雇用管理制度の改善などの取り組みや好事例など、会員企業に情報を提供する。
2024年度実施する事業計画
~継続的事業
①新入社員研修の開催
②高校生の現場見学会の開催
③女性活躍研究会の開催
④九州建設業協会労務対策委員会への参画
⑤福岡県建設雇用改善推進対策会議への参画
⑥建設キャリアアップシステムへの対応
⑦福岡県建設産業魅力発信・女性活躍実行委員会への参画
労働安全衛生法に基づく対策を周知・徹底し、労働災害の防止に努めるとともに、建災防等団体との連携を密にし、諸事業の実施に関する情報収集に努め、会員企業に提供する。
社会的責任を果たし、コンプライアンスに則った事業活動を行うため、「建設企業(団体)行動憲章」(全建作成分)の周知を会員企業に図るとともに、建設業適正取引推進機構や全国建設業協会と連携し、必要に応じ研修会等を開催する。
当協会の社会的貢献活動の充実を図るとともに、建設業が国民・社会から正しい理解が得られるよう啓蒙活動等に努める。
地域建設業におけるSDGsへの取り組みについて、有用な情報を会員企業へ提供するほか、全建「地域建設業SDGs経営指針」に基づく全国建設業協会の活動と協調・連携しながら、会員企業におけるSDGsの理解促進と更なる意識の醸成を図る。
2024年度実施する事業計画
~継続的事業
①清掃活動等の実施
②献血活動の実施
③緊急災害支援活動(ブルーシート・土嚢袋の無償配布)の実施
近年激甚化・頻発化する災害に対し、地域の防災・減災対策、災害対応等を担う建設業界として災害予防や応急復旧活動について関係行政機関と連携強化を図る。
また、福岡県との防災協定に基づく対応を強化する他、災害対策基本法に定める「指定公共機関」に指定された全国建設業協会の会員として防災業務計画に基づき災害対応に係る必要な体制構築に向け研究を行う。
2024年度実施する事業計画
~継続的事業
①防災研究会の開催
②福岡県建築物災害対策協議会への参画
建設業の果たす役割や必要性について、国民・社会から正しく理解され、若者が夢を以て将来を託せる魅力ある産業とするため、建設業界の実態や主張を効果的に発信し、積極的な広報活動を行う。
2024年度実施する事業計画
~継続的事業
①広報紙「ひと・まち・ふくおか」の作成・発行
②ホームページの活用
③建設関連団体合同新年賀詞交歓会の開催
1.関係各官公署との連絡協議
2.全建・九州ブロック並びに各都道府県との連絡協議
3.会員所在各市との連絡協議
4.各地区会員との連絡協議並びに活動援助
5.建設関係功労者表彰候補者、全建表彰候補者の推薦並びに協会表彰の実施
6.事務局の事務合理化
7.建退共福岡県支部に対する業務援助
8.関係団体に対する協力援助
・福岡県建設関連産業協議会
・西日本建設業保証(株)
・(公財)建設業福祉共済団
・(一財)建設業振興基金
9.各種関係団体並びに報道関係者との連絡協議
10. 全建・九州ブロックと緊密な連携による施策の推進
11.その他本会の目的を達成するに必要な事業
◎上記事業計画推進のための必要な調査・視察等の実施、法令の制定・改正に伴う説明会、各種講習会等を開催(支援)する。